半年の長きに渡り疾走してきた青春恋愛伝説、ついに最終回であります。
変人だけど思いは一途、思い込んだら命がけという案外武男似の恋敵を壁にして、恋人への思い、恋人からの思いを確認して一年が終わるお話でした。
端正で良く出来たこのアニメらしい、面白くてキュンとしていい気持ちになる、素晴らしい最終回でした。

今回のエピソード、構造としては第15~16話の弟子エピと同じでして、敵として出てきたはずの相手がライバルに惚れ込んでしまって、正面から戦って気持ちよく負けるという展開です。
妬み、嫉みや憎悪といったネガティブな感情をあえて排し、恋敵といえ尊敬できる気持ちの良い男(女)として描くことを徹底しているのは、真っ直ぐなお話を書くことに拘るこのアニメらしい重点。
立場的には憎まなければいけないはずなのに、どうしても憎めない相手として描くことで、主人公サイドも恋敵サイドも値打ちが上がるしねぇ。
悪いことやイヤなことを視界に捉えつつも、それに引っ張られずあえてのお伽噺を堂々とやり切るというのは、このアニメの一番強いところだと思います。

んで、一之瀬さんの好漢っぷりがヤバイ。
第7話の柔道描写もそうなんですが、専門的な描写に手を抜かないことで、キャラクターが真剣に課題に向き合う姿勢が伝わってくるのは、映像作品ならではの強さだと思います。
飴を扱うしぐさやチョコレートを剥がす手際がよどみなく描かれればこそ、菓子作りに賭ける一之瀬さんの本気と、それを感じ取って応援してしまう武男の素直さが浮き彫りになるわけで。
ただ題目で『みんないい人ですよー』というのではなく、こういう無言の説得力を積み上げてこそ、キレイ事は胸に落ちてくるなぁなどと思います。

ただ一生懸命で真剣なだけではなく、バカで思い込みが激しく面白いという、コメディアンとして優秀な所も一之瀬さんが好きになれるポイント。
このアニメコメディでもあるので、面白いってのは大事です。
心の書き文字と福山さんの好演を組み合わせることで、テンポよく彼の人柄が伝わってくるのが良い。

恋に敗れた後は素直に立ち直ってくれないと後味悪いですが、素直に立ち直れる準備を事前にしておくことで、キレイ事閑雅薄れているのもいいと思います。
アレだけ武男と心の交流をして、ケーキの真ん中に据えてしまうくらい惚れ込んだのなら、失恋しても後には響かないと納得できる。
エピソードの終わらせ方としても技ありだし、世界観の透明度を維持する上でも大事なことでしょう。


そういう一之瀬さんを壁にすることで、武男が動揺もすれば自信をなくしたりする普通の男であることが見えたり、そういう普通の男が手に入れた恋のかけがえなさが分かったりするのが、ライバルという存在の良いところです。
スナも言ってましたが、超人として描かれ続けた武男の人格的な弱さは、人間として持っていて当然のもの。
そういうものを自覚し向きあえばこそ、より深みのある強さを手に入れ、超人っぷりにも説得力が出てくるわけです。
スーパーマンの急所を描くためにも、凛子という一番柔らかい所を攻めてくる一之瀬さんの存在は、ラストエピソードに相応しいものだったと思います。

武男が動揺し迷うことは、『目に見えないものこそかけがえない』という今回の、そして作品全体のテーマを見据える上でも大事だったと思います。
視聴者はやはり主人公の目を通して世界を見るので、武男が凛子を見失い再発見することでお話の軸がもう一度顕になり、このお話が何を大事にしてきたか見えて終わることが出来る。
しつこいぐらい台詞で強調していたのは、むしろ少女漫画らしい過剰なエモーションンを生んでいて効果的だったとも思います。

只の人間である武男も見たいけど、やっぱり僕らが好きなのはパワーで王道を踏破する超人武男。
飛脚モードで全力ダッシュするシーンを入れてくれたおかげで、最後も『いつもの笑い』を産んでくれたのは凄く嬉しいです。
やっぱね、ウルトラマンにはスペシウム光線を撃って欲しいものなわけですよ。
だから、過剰な力みでダッシュしつつ、僕らには出来ないまっとうで力強い生き方を貫く武男の姿が事態を良くしていくのは、本当に有り難い。

そういう武男を見守るスナにお礼をちゃんというシーン作ったのも、このアニメらしい目配りの良さでした。
スナは今回ほんとにじっと武男を見守ってて、凛子との恋愛という軸以外にももう一本、スナとの爽やかな友情という軸がこのアニメにはあると思い出させてくれます。
一之瀬さんとの魂の交流もそうなんだけど、男たちの絆を描くのもうまいわよね、このアニメ(今更な感想)

名曲『未来形Answer』を流しながらのスケッチも、定番ながら叙情性豊かな演出が良く効いていて、武男とみんなが走ってきた一年、それで変わった人達の姿をよく捉えてくれました。
このアニメに相応しい、爽やかで穏やかな終わり方だったなぁ。
お話の展開だけではなく、演出に関してもど真ん中を恥ずかしがらずに抜いてくるってのも、このアニメらしい強さよね。

 

というわけで、俺物語!!のアニメも終わりました。
原作の良さを深く理解し、それを映像に閉じ込めるためにはどうしたら良いのか、とても考えられたアニメだったと思います。
少女漫画力全開なエモい演出、テンポの良さで畳み掛ける笑い、魅力的なキャラクター造形と声優さんの好演。
映像を構成する各要素が、自分たちが見せたいもの、大事にしたいことに直結していた感じがします。

声と動き付きで一気に見てみると、この話思いの外成長の物語なのだと、認識を新たにしました。
真っ直ぐすぎて周りが見えなくなる武男が、恋人という『一番気にかけて優しくしたい人』を手に入れることで、自分の良さを殺さないまま、少しづつ変わっていく。
ギャグに火力があるし主人公超人なので忘れがちですが、高校一年生を主人公に据えた物語として、とても大事なことを疎かにしていないと、改めて気づいたなぁ。
これは原作を再構築して、出会いから一年間の物語としてまとまりよく収めた構成の妙だとも思います。
ラストに4月が来ることで、一つの季節が終わってまた始まる感じ、凄く出るもんなぁ。
大事な人との別れや新しい命との出会いとか、恋から離れた部分でも青年が成長していく上で大事なことを、ちゃんと入れ込んでいたのも良い。

あと、コメディとして本当に面白い話なんだということも、アニメになって再確認した。
過剰な力みと冷静なツッコミが生み出す笑いは、真っ直ぐなお話に豊かな色彩を添えていて、素直に楽しめるラブコメに仕上がっていました。
人を見下したり、バカにする笑いではけしてないのも、このアニメらしいところ。
そういう風に受け取れるよう、演出や見せ方に気を使ってくれいる所もまた、このアニメ化らしい部分だったと思います。

お互いがお互いを好きすぎる恋の描写もまた、オッサンの胸をキュンと締め付けるパワーが有りました。
浅香監督得意の透明感と温かみのある演出が良く効いていて、身悶えするべきシーンでちゃんと身悶えできたのは、最高に良かった。
純情すぎる二人の恋が停滞しないよう、細かく細かく一歩ずつ進めていたのも、良かったなぁ。

大好きな原作を、愛情たっぷりに素晴らしい仕上がりでアニメ化してもらった、幸福な体験でした。
毎週楽しく見れて、いい気分で見終わることが出来る。
あまりに気持ち良いので忘れてしまいがちですが、それはとても稀有で有り難い、奇跡に似た出来事なのだと、再確認させてもらった。
そんなアニメです。
良いアニメでした、ありがとう。